■コカ葉(COCA LEAF)

 南米のボリビアやペルーなど、アンデスの高地に産する耐寒性の樹木、エリスロキシロン・コカ(Erythloxylon coca)と呼ばれる木の葉には、今日コカインとして知られるある種のアルカロイドが含まれています。この樹木は国内消費用に正規に栽培されていますが、それらの一部は不正ルートを通じて流され、コカ・ペイスト(coca paste)の形にされたうえ、塩酸コカインを製造する能力を持った密造所へと運ばれます。

■クラック(CRACK)

 「クラック」(CRACK)や「ロック」(ROCK)という名で知られているこの薬は、おそらく今日巷で密売されているクスリの中で、もっとも危険なものの一つであると言えましょう。あらゆる年齢や階層の人々に広く乱用されていると言っても過言ではありません。コカインを精製した形のこのクスリは簡単に入手でき、そのうえ極めて強力です。

 クラックは「塩」(エン)の形をしたコカインに、化学的な変化を与えることによって 作られる遊離体の結晶性アルカロイドです。(例えば塩酸コカインからHCLが取れて、コカインの遊離体になることを説明しているのです。)これは膏薬状のものが固まった状態のものですが、通常はこれを砕いて、いくつもの砂礫状の小さな塊となっています。安価で強力ですから、勢い使用者の間で大きな問題を作ってしまいます。

 クラックによる「ハイ」(恍惚感)は、吸煙したとき即座に現れます。効果の持続時間は、ほんの3〜5分ですから、次々とこの強力なクスリを反復して使用してしまうのです。クラックはコカインと同様危険ですが、その程度は一層激しいものです。

 このクスリに対する依存症は極めて高いもので、たとえ一回でも使いますと、忽ち依存ができてしまいます。いてもたってもいられない程の極めて強烈な欲求が生じるのがこの クスリの副作用で、生活の全てを犠牲にしてでもクスリの満足感を味わおうと します。

■フリーベイシング(FREEBASING)

 1979年以降、コカインの喫煙用フリーベイシング(遊離体を作る作業)が目を見張る程盛んになってきました。フリーベイシングと称する所以は、巷で密売されているものが「塩」(エン)の形をしているため、加工を通じて、これから塩基を取り除いて(つまりフリーにして)活性をもったクスリに作り変えるからです。こうした加工は、溶解したコカインを、エーテルや水酸化ナトリウム、又はベイキング・パウダーなどを混入させることにより、行います。コカインの「塩」(エン)は溶解し、後には純粋なコカインが細粒の形でできあがります。巷で密売しているコカイン約1グラムから、遊離体のコカイン約0.1グラムができます。

 こうした出来上がった細粒は、水又はラム酒を満たしたパイプ[多くの場合ガラス製]に詰めて吸煙します。

 火皿の中には数枚の小さな金網が敷き詰められており、コカインがこぼれないようになっています。フリーベイス・コカイン の蒸気を発生させるために 常に熱を加え続けます。そのためにマッチ、ライター、更にはブタン・トーチ(ガスボンベから炎が吹き出すタイプ)などが使われます。

 かくして、コカインの蒸気は吸うことによって直接肺に達します。そして直ちに劇的な「ハイ」な感じ(恍惚感)が訪れるのです。この気分は長くとも10分程度ですから持続させるためにはすぐに次の一服をやらなければなりません。使用を重ねるうちに、極端な偏執病に陥り、精神に重大な障害を来します。

 フリーベイシングは最早乱用者の生活にとって他の何事にも替えがたい極めて重要な習慣になってしまうのです。またこうした吸煙は、回を重ねる毎に頻繁になりますから、非常に高くつくことにもなります。更に、フリーベイシングに絡むもう一つの危険性は、火事です。エーテルやラム酒にあまり近付けて点火しようとしたことによって火傷を負った乱用者もいるのです。