■「麻薬及び向精神薬取締法」、「大麻取締法」、「あへん法」「覚せい剤取締法」の概要

1)規制対象物質
薬物四法で規制される物質は、次の国際的な3つの条約に基づいています。
1:「1961年の麻薬に関する単一条約」(以下「単一条約」):モルヒネ、ヘロイン、コカイン、大麻、けし、あへん等の物質が規制対象

2:「向精神薬に関する条約」(以下「向精神薬条約」):LSD、MDMA等の幻覚剤、アンフェタミン、メタンフェタミン等の覚せい剤、ペンタゾシン、ブプレノルフィン等の鎮痛剤、バルビタール、ジアゼパム等の催眠鎮痛剤又は精神安定剤が規制対象

3:「麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約」(麻薬新条約):麻薬及び向精神薬の密造に使用される化学物質及び前駆物質としてエフェドリン、エルゴタミン、リゼルギン酸、無水酢酸、塩酸、硫酸等18品目が規制対象

わが国では、前述の薬物四法により、これらの物質が規制されています。国内法とこれらの条約との関係を見ると、単一条約で規制されるもの(大麻、大麻樹脂、大麻草、けし、あへんを除く。)及び向精神薬条約の付表氓ノ分類される薬物を麻薬及び向精神約取締法により「麻薬」として規制しています。

また、向精神薬条約の規制対象であるアンフェタミン及びメタンフェタミンは、すでに 昭和29年(1954年)から覚せい剤取締法で規制しています。向精神薬条約のこの他の規制対象物質については、概ね付表の薬物(アンフェタミン及びメタンフェタミンを除く。)を「第一種向精神薬」、付表。の薬物を「第二種向精神薬」、付表「の薬物を「第三種向精神薬」として条約に応じた規制を行っています。

単一条約で規制される大麻草、大麻、大麻樹脂については、大麻取締法により規制しています。

単一条約で規制されるけし、あへんについては、あへん法により規制しています。

麻薬新条約で規制されるエフェドリン、プソイドエフェドリン、フェニル酢酸は、すでに覚せい剤取締法により指定された8物質の「覚せい剤原料」の中で規制されていますので、その他の原料物質を麻薬及び向精神薬取締法により「麻薬向精神薬原料」(以下「麻薬等原料」)として条約の要請に応じた規制を行っています。

 2)規制の概要

 法律では、麻薬、向精神薬、大麻、あへん、覚せい剤といった乱用薬物の用途を医療や学術等の目的に限定し、これら規制薬物の製造、輸入、輸出、譲渡、譲受、所持等を免許制や許可制において規制を行うとともに、その違反については、処罰を課しています。

 これらの規制対象物質の取り扱いが円滑に行われるよう、それぞれの物質について手引きやマニュアルが作成されています。これらの詳細は第2章以下を参照して下さい。

 病院・診療所における向精神薬取り扱いの手引き(第2章)
 各団体の向精神薬自主管理マニュアル(第11章、232ページ〜253ページ)
 麻薬向精神薬原料取り扱いの手引き(第4章)
 覚せい剤原料取扱者実務要領(第6章)
 医療機関における麻薬管理マニュアル(第8章)
 モルヒネ製剤の調剤マニュアル(第9章)

 また、法律の規制内容の詳細については、第3・5・7・10章のQ&A及び第11章の関係通知が参考となります。なお、薬物4法のそれぞれの特徴として、次の点が挙げられます。

1:麻薬及び向精神薬取締法や覚せい剤取締法では、薬物の輸入、輸出、製造、流通、 所持、施用、使用等を規制しているのに対し、大麻取締法は、大麻の栽培と大麻の流通、所持等を規制し、また、あへん法はけしの栽培とあへんの輸入、輸出、生産、流通、所持等を規制しています。

2:あへんに加工が施されたあへん製剤(あへん末、あへんチンキ、ドーフル酸等)については、あへん法ではなく、麻薬及び向精神薬取締法により規制されています。

3:麻薬及び向精神薬取締法及び大麻取締法では、「免許」という用語を使用し、覚せい剤取締法では、「指定」という用語により覚せい剤及び覚せい剤原料の取扱者を限定しています。また、あへん法では、栽培の「許可」という用語を使用しています。しかしながら、いずれも禁止の解除を行うという点では、その法律的効果は同一です。

4:薬物4法各法では、薬物ごとの乱用による危害の程度、医療や学術研究などでの有用性、乱用状況等の社会性を考慮した規制を課しています。

例)

・ヘロインは、有害性が高く、医療上、モルヒネ等の麻薬で代用可能であることなどから、ヘロインの輸入、輸出は全面的に禁止されています。

・わが国においてその乱用が大きな社会問題化している覚せい剤についても、輸入、輸出は全面的に禁止されています。

・あへんの供給を適正なものとするため、輸入、輸出、収納、麻薬製造業者及び麻薬研究施設の設置者への売渡の権能は、国に専属し、その他の流通を禁じていますが、向精神薬については、医療上の使用範囲が広く、ほとんどの病院、診療所で使用されている一方、その作用の強さと乱用実態からみて麻薬のように取扱者を特定する必要はなく、病院等における向精神薬の適正保管等の義務を課せば足りると考えられるので、病院、診療所については、免許制にはなっていません。

・麻薬及び覚せい剤の流通については、供給段階から使用の段階に向かう一方通行であり、流通経路を限定することによって、麻薬及び覚せい剤の正規流通以外への流出を防止しています。一方、向精神薬の場合には医療を含めその用途は広いことから向精神薬を取り扱える業者、病院、研究機関等を明確にし、その間で流通が行い得ることとなっています。

・覚せい剤原料及び麻薬等原料については、それらを原料として乱用薬物が密造されることが問題点ですが、これらの物質の用途は広いため、規制内容は麻薬や覚せい剤よりも緩やかなものとなっています。このうち麻薬等原料については、麻薬等原料の国際取引に係わる輸入業者及び輸出業者、さらに密造に流用された場合、容易に麻薬、向精神薬に転換されうる特定麻薬等原料の製造業者、卸小売業者のみを届出制下に置いています。特定麻薬等原料以外の麻薬等原料を麻薬等原料輸入業者が輸入する場合や麻薬等原料輸出業者が輸出する場合には、その都度の届け出の必要はありませんが、特定麻薬等原料の輸入、輸出には、その都度の届け出が必要です。このように麻薬等原料については条約に基づいた必要最低限の規制としていますが、覚せい剤原料については、覚せい剤乱用がわが国の大きな社会問題であることから、病院、診療所を除き、覚せい剤原料取り扱いの必要のあるものを免許制下に置き、輸入を覚せい剤原料輸入業者に限り、輸出も覚せい剤原料輸出業者に限り、さらに輸入、輸出の都度、厚生労働大臣の許可を必要としている等、麻薬原料に対する規制より厳しい内容となっています。