[ 関係国際機関の活動 ]

 従来から麻薬などの規制に関しては国連麻薬委員会(CND)、国際麻薬統制委員会(INCB)、国連薬物統制計画(UNDCP)等が国連の関係機関として積極的に国際的な役割を果たしてきている。

ア.国連総会(General Assembly:GA)
 国連憲章は国連に6つの主要機関(総会、経済社会理事会、安全保障理事会、信託統治理事会、国際司法裁判所、及び事務局)を設置している。

 そのうち、全加盟国の代表によって構成される国連総会は条約、議定書及び決議の採択、基金の承認、並びに、各国政府の意見を交換する公開討論の便宜を図る機関である。 近年では、総会は1987年6月の国際麻薬会議(International Conference on Drug Abuse and Illicit Traficking)開催の便宜を図った。同会議においては、麻薬乱用防止総合対策要綱(Comprehensive multidisciplinary Outline of Future Activities relevant to the Problem of Drug Abuse and Illicit Trafficking:CMO)が採択されたほか、同会議を記念して、会議終了日の6月26日を「国際麻薬乱用撲滅デー(International day against Drug Abuse and Illicit Trafficking)」とすることが宣言された。

 また、1989年11月の第44回国連総会においては、わが国を含む123カ国の共同提案による麻薬特別総会(General Assembly Special Session on Drugs)の開催決議を採択、翌、1990年2月にこれを開催した。この特別総会においては、国際社会が直面する麻薬問題に対処するため世界各国が同時に一致した集団行動をとる必要があるとの観点から、「政治宣言」及び「世界行動計画(Global Programme of Action :GPA)」が採択され、1991年から2000年までを「国際麻薬乱用撲滅の10年(United Nations Decade against Drug Abuse)」とする旨の宣言が行われた。

 さらに、1993年秋に開催された第48回国連総会においては、会期中の10月26日から28日までの3日間、麻薬特別会合が開催され、麻薬、向精神薬の不正生産、販売、取引等に関する国際協力強力化が決議された。

イ.国連経済社会理事会(Economic and Social Council :ECOSOC)
 54のメンバー国により構成されるECOSOCは、薬物乱用規制の分野における国連政策全般の構築についての責務を負い、国連の経済社会計画を最大限にいかす薬物規制活動の調整を行い、各国政府に対し適切な勧告を作成する。その業務遂行に当たり、ECOSOCはその機能委員会の一つである麻薬委員会による補助及び助言を受け、麻薬委員会に対してはその上位組織としての機能を有する。

ウ. 国連麻薬委員会(UN Commission on Narcotic Drugs : CND)
 国連麻薬委員会は国連経済社会理事会の機能委員会の一つであり、現在53カ国の委員会で構成されている。その機能は、麻薬等に関する諸条約の履行と監視、関連条約による麻薬等の統制に関するあらゆる事項について国連経済社会理事会に助言すること、並びに、必要に応じて薬物統制を強化する目的の勧告及び条約案の作成を行う等、いわば麻薬等の国際統制に関する意志決定の中心機関である。同委員会では、世界の薬物乱用状況の考察、それに対する世界行動計画の実施、国際条約の実施等について協議、検討がなされてきている。

 わが国は第16回会期(1961年)以来引き続き委員会に選任され現在に至っており、1995年には、3月14日から3月23日までウィーンにおいて第38回通常会期が開催され、厚生労働省薬務局麻薬課からも出席した。

エ. 国際麻薬統制委員会(Internatiotal Narcotic Control Board : INCB)
 INCBは、1961年の麻薬に関する単一条約によって設立された機関であって、経済社会理事会(ECOSOC)が選挙する13人の委員(一個人の資格により選出。3名はWHOが指名する医学・薬学の有識者名簿から、残り10名は国連加盟国及び国連加盟国ではないが麻薬に関する単一条約の締約国が指名する者の名簿から選出)から構成されている。

 INCBは薬物関連諸条約により規制されている麻薬及び向精神薬の生産、流通及び消費を世界的視野において統制する等の任務を有している。そのため、各国政府から麻薬などの統計及び見積もり報告を受け、その集計を行い、医療及び学術研究目的の麻薬等の必要量を検討し、これらの栽培、生産、製造及び使用について条約上求められている必要な制限を行うことにより、正規ルートからの横流れを防止するほか、不正栽培、密造等による不正取引及び乱用の防止のための諸活動を行う。

 また「新条約」の発効に伴い、同条約が対象とする麻薬等の原料物質による密造に係わる情報処理も行うようになったほか、それらの物質の評価を必要に応じて行い、その結果を麻薬委員会に通知する役割を負っている。

 INCB事務局は国連薬物統制計画(UNDCP)設立に伴い、その機関がUNDCPに組み込まれたものの、INCBの持つ独立性からINCB事務局活動の独自性も保持されている。  

オ. 国連薬物統制計画(United Nations International Drug Control Programme :UNDCP)
 1989年12月、薬物乱用規制に関する国連機関緒能率化を求める国連総会決議44/141が採択され、さらに1990年12月の国連総会決議45/179により、国連麻薬委員会(CND)の事務局である国連麻薬部(DND)、国際麻薬統制委員会(INCB)の事務局及び国連薬物乱用基金(UNFDAC)を統合したUNDCPが1991年1月1日から発足し、初代事務局長として国連事務総長補ジョルジュ・ジャコメリ氏(伊)が1991年3月に就任した。

 UNDCPは、薬物対策の為の国連専門機関として、薬物問題全般に幅広い活動を行っている。例えば、総合的な農村対策、作物転換、薬物乱用防止、中毒者治療、各国の立法や制度改革への助言のほか各種国際会議の開催など、国際レベルでの薬物対策に指導力を発揮している。ウィーンに本部があるほか、世界20カ国に事務所を配置し、総職員数は約300名である。

 UNDCPの財源は各国政府等からの資金援助が中心となっており、1994年度、総額7,000万ドルの資金が集められた。わが国は1973年にUNDCPの前身であるUNFDACへの拠出を開始して以来、UNDCP設立後も拠出を継続している。1991年以降のわが国のUNDCPへの拠出状況は、1991年(平成3年度)300万ドル、1992年(平成4年度)370万ドル、1993年(平成5年度)450万ドル、1994年(平成6年度)550万ドル、1995年(平成7年度)600万ドルであり、UNDCPへの主要な拠出国となっている。

 さらにわが国においては、平成5年より(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センターが「ダメ。ゼッタイ。国連支援募金」を全国規模で実施しており、この募金活動によって集められた浄財を、毎年UNDCPへ寄付している。この募金は発展途上国において薬物乱用防止活動に従事しているNGOへ、UNDCPから分配されている。

 また、1991年2月に東京で開催されたアジア・太平洋地域麻薬対策高級事務レベル会議において、わが国は東南アジアにおける麻薬対策を推進する為のセンター設置を提唱し、これをうけて1992年3月にはバンコクにUNDCP東南アジア地域センターが開設された。  

カ. 世界保健機関/薬物乱用対策計画(World Health Organization : WHO Programme on Substance Abuse :PSA)
 WHOの薬物統制計画は依存性問題の検討に関与する等、関連条約に規定されている責務を実践することにある。すなわち、「単一条約」及び「向精神薬条約」の条項に従い、WHOは国際統制を行うべき物質の決定に関して必要不可欠な役割を担っている。

 これらの条約は加盟国が条約を完全に履行し、規制物質が医療及び学術研究目的に限って合理的に使用されることによって、薬物乱用防止努力を確実にすることを求めている。そして、それらの条約によりWHOは審査対象となった特定物質に関してその依存性の程度及び医療上の有用性を調査し、当該物質の乱用による公衆衛生上の危害及び関連する社会問題についても検討する義務を負っている。そのため、WHOは必要に応じて依存性薬物専門委員会(Expert Commitee on Drug Dependence)を召集している。

 さらに、1990年9月から薬物乱用に対する保険衛生面からの予防及びケアをより一層効果的にするため、WHOにPSAが発足した。PSAの主な活動内容には、調査研究及び開発、薬物乱用のない生活の促進、合法的な麻薬及び向精神薬に対する保険衛生面からの規制、治療及びリハビリ、並びに各国で行われている関係プログラムに対する援助等があげられている。PSAの本部はWHO本部同様ジュネーブに設置されており、各WHOの地域事務局及び関連機関と連絡をとりつつ、計画を遂行する。