[ ステロイド ]

 現在の薬物に関する問題の一つにステロイドの乱用があります。ステロイドは男性ホルモンの一つであるテストステロンに倣った合成薬物で、筋肉増強作用があります。筋肉を新たに作り出す作用があるということは、同時に筋肉組織への血流を良くすることでもあり、筋肉疲労を速やかに回復させ、痛みに対する耐性を強化します。

 ステロイドは医師の処方せんによってのみ、入手が可能な薬物です。しかし、筋肉増強作用があることから、ステロイドのヤミ市場の動きが表面化してきました。最大のステロイド乱用者は男性の運動選手・・・フットボール、ウェイトリフティング、ボディービル、そしてトラック競技やフィールド競技(円盤投げ、砲丸投げ、槍投げ)など体全体の筋肉強化を必要とする人々です。もともとスポーツ選手の間だけの乱用問題でしたが、今や小学生程度まで乱用者層の年齢が低下する兆しが見え始めました。

■影響

 ステロイドの乱用による影響は色々あります。男性の乱用者では肝臓癌や前立腺癌のほか、心臓病や心臓発作、動脈癌、胸痛、高血圧、無精子症、凶暴な行動、過度な緊張、水分の停留(水膨れ状態)、性欲減退、睾丸の萎縮、抜け毛の急増、女性的特徴の発現(乳房の肥大化など)、にきび、うつ状態などです。一方、女性の乱用者では、循環系の病気、肺及び乳房の癌、体毛(顔や体)の成長、生理不順、性器の肥大化、バスト・サイズの減少、抜け毛の急増、声の低音化、凶暴な行動、にきびなどとなっています。

 同様の副作用の発現が子供の乱用者にあっても見られます。子供達は行動が極端に変わることを承知で危険を冒したり、急激な成長を試してみたり、肌の色が変色したり、目の色が黄色っぽくなるのをためしたりするほか、黄疸、うつ状態、不機嫌、吹き出物などが発現します。

 ステロイドの乱用は極めて危険です。筋肉質の体に見られたいとか、運動競技に立派な成績を納めたいといったプレッシャーが、こうしたクスリの乱用に駆り立てているようです。行動の極端な変化や情緒的急変といったものは彼等自身に深刻な問題を提起します。ステロイドの使用を止めれば、体がすべて元のサイズにもどり、元の肉体的条件に逆戻りすることを、乱用者は知っていて使用を続けている訳ですから精神的な中毒がそもそも問題です。正常な人にとっては、おそらく理解できないことでしょう。

 子供達が異常な発育を示したり、行動のパターンがガラリと変わったりしたときは、ステロイド乱用の徴であると考えられる場合がありますから、父母の方々は充分に注意することが必要です。何事によらず、早期発見が重大な結果の未然防止には必要です。同時に父母の方々は、子供さんに対して、肉体的な属性(特徴など)より、本質的な自己の尊厳というものを確立するほうが大切なことであるという励ましをして頂くことが是非とも必要です。自信をもつこと、それが薬物乱用の未然防止には、何よりも必要です。