-日本代表(高村正彦事務次官)演説-

議長、並びにご列席の皆様、今日、薬物問題は地球的規模の深刻な問題であり、国際社会が一丸となって取り組むべき重要な問題であることは言うまでもありません。とりわけ、近年では、世界的に薬物乱用の低年齢化と、従来のヘロイン、コカイン等に加え覚せい剤の乱用が進んでいる状況にあり、薬物問題は二十一世紀へ向けて人類として何としても解決せねばならない優先課題であります。

そもそも、薬物犯罪が、組織犯罪の典型であることに鑑みますと、薬物犯罪と組織犯罪とを総合的に関連付けて対策を講じていくことが必要であり、特に供給面への対策については、かかる観点を踏まえた法執行の徹底が重要であります。

一方、薬物乱用防止には、供給面のみならず需要面においても適切な対策が取られることが必要であります。薬物使用に対する教育、治療、リハビリともに末端使用者への厳正な取締りを含む総合的な対策が必要であり、なかんずく、青少年への薬物乱用防止教育、啓発活動が重要と考えます。

議長、我が国としましては、このような認識のもとに先日「薬物乱用対策5カ年戦略」を発表し、今後の中期的な指針を示した所でありますが、その中でも、特に覚せい剤対策と青少年対策について訴えたいと思います。

第一に、覚せい剤につきましては、その製造容易性および製造廉価性等から、近年従来の薬物に替えて又は加えて、急速に世界的規模で乱用が広まってきている状況にあります。そもそも、覚せい剤の害は、ヘロイン、コカイン等とくらべ決して勝るとも劣らないものであります。二十一世紀の主要な薬物問題と指摘されながらも、最近になり急速に広まってきたものであるため、概して人々の危険性の認識が未だ低い状況にあり、今後の乱用が特に危惧されます。

我が国の状況について申し上げれば、従来からも覚せい剤が薬物の中心でありましたが、特に近年、乱用の低年齢化や薬物の入手容易化等の乱用傾向の質的変化が見られてきており、「第三次乱用期」に入ったものと考えられる状況にあります。

第二に、青少年対策につきましては、需要削減を一つの指針としての教育の重要性について言及されているところであります。人類の未来を担う青少年を不正薬物の害から守るには、当然の事ながら、青少年に対して薬物に対する正しい知識を付与し乱用を防止するための教育や啓発活動が重要であることはいうまでもありません。我が国における具体的な事例として、警察職員の専門家を学校に派遣して実施している薬物乱用防止教育の開催や、麻薬・覚せい剤乱用防止センターが中心となって実施しております「ダメ。ゼッタイ。」運動があります。これらの活動はこれまで大きな成果を上げているところであります。

議長、薬物問題の解決には国際的な協力体制が不可欠であり、我が国としては、「薬物乱用防止5カ年戦略」でも言及しているとおり、各種協力を推進することにし、特に国連システムの中で、麻薬対策で中心的役割を担う国連薬物統制計画(UNDCP)への協力を核として国際協力を行って参ります。

まず、第一に「東南アジア覚せい剤プロジェクト」への協力であります。最近、東南アジア地域において、これまでのケシの不正栽培とヘロインの密造に加えて覚せい剤の密造が大々的に行われるようになってきておりますが、これに対向するUNDCPのプロジェクトが、この「東南アジア覚せい剤プロジェクト」であり、我が国はこれを全面的に支援します。

第二に、ミャンマー「ワ」プロジェクト支援であります。このプロジェクトはミャンマー北東部「ワ」地域において従来より行われてきたケシの栽培に代わる代替作物を開発するものであります。

この他、我が国は本年四月ヤンゴンにおいて、UNDCP及びミャンマー政府との共催で、「ケシ代替開発に関する麻薬セミナー」を実施し、同国を含む当該地域のケシ栽培の代替開発に協力してきています。

なお、UNDCPと覚書を締結している東南アジア周辺六カ国が今次会合で共同宣言を出すと伺って、我が国としても勇気づけられるものであります。

第三に、法施行面での協力です。薬物犯罪が典型的な国際組織犯罪としての性格を有することに鑑み、警察、税関等の取締機関相互の国際的協力関係が重要であり、実務レベルでの各国間協力、関係国際機関を通じた協力、情報交換を強化して参りたいと考えております。昨年十月には、我が国の横浜において、UNDCPと我が国海上保安庁とで、海上薬物取締り研修セミナーを開催いたしました。この種の海上薬物取締り能力向上のための研修事業は、今後とも継続して実施していきたいと考えております。

さらに、マルチでは米州機構・全米麻薬濫用取締委員会への拠出があり、また、バイではUNDCPとの連携で、ミャンマーにおけるケシの代替開発にもつながる食料増産援助計画を検討中であります。

議長、本特総は、二十一世紀に向けての新たな国際的な薬物乱用防止戦略を策定するために開催されるものであります。これまでの累次の準備会合において、「政治宣言」および六つの作業文書に関する多くの議論が行われました。これらが、今後の総合的、国際的な薬物乱用撲滅の為の対策の中核となることを期待しております。

そして、これにより一日でも早くすべての薬物乱用が地球上から撲滅されるよう祈念してやみません。ご静聴ありがとうございました。