-C:司法協力を促進するための措置-


総会は、司法協力を促進するために、以下の措置を採択する。

I:犯罪人引渡し

1.各国に以下を勧告する。
(a)必要な場合可能な限り、その国内立法を定期的に見直し、自国の憲法上の原則と法律制度の基本理念に合致する方法で、犯罪人引き渡しの手続きを簡素化する。
(b)犯罪人引き渡し請求の受付、対応および処理を担当する権限ある当局についての情報を他の国に提供する。この関連で、国連薬物統制計画に当該当局の名称、住所および電話番号を通報することは有用と言える。
(c)国内の法律および犯罪人引渡し慣行をまとめた資料を作成し、これを他国の利用に供する。
(d)憲法の規定、国際薬物統制条約および国内立法に従うことを条件に、外国での起訴を認めるが、有罪判決が下された場合には国籍国で服役すべく送還されるという合意の下に、自国民の重大薬物犯罪人の引渡しを検討するとともに、特に重大犯罪が絡む場合、その他従来の犯罪人引渡しに関する例外規定を再検討する。
(e)犯罪人引渡し条約を交渉する際、「犯罪人引渡しモデル条約」を適宜資料として活用する。
(f)安全で国内の法律制度と矛盾しない限りにおいて、通信を容易にするために近代技術を最大限活用する。

II:司法共助

2.各国に以下を勧告する。
(a)1988年の「麻薬および向精神薬の不正取引の防止に関する国連条約」第7条の実施を可能にする国内立法を確保する。
(b)司法共助の要求を実施・執行し、または執行の移送を行う権限をもった当局を指定するとともに、1988年条約第7条8項および9項の規定に従い、かかる要求の受理を担当する当局の名称、住所、FAX番号および(あれば)電子メール・アドレス、ならびに受付可能な言語を事務総長に通報する。
(c)司法共助の要求方法について、他国に手引きあるいはマニュアルを提供する。
(d)司法共助要求のためのモデル書式を作成する。
(e)司法共助に関する条約を交渉する際、「刑事に関する司法共助モデル条約」を適宜資料として活用する。
(f)安全で国内の法律制度及び利用可能名資源と矛盾しない限りにおいて、インターネット、ファクシミリ等の近代通信技術を最大限活用し、司法共助要求およびかかる要求の執行を迅速化・効率化する。
(g)安全で国内の法律制度及び利用可能な資源と矛盾しない限りにおいて、証人の発言および証言を得るために、電話および映像回線技術の活用を検討する。

III:刑事手続きの移送

3.各国に以下を勧告する。
(a)刑事に関する手続き移送の経験がある場合、かかる経緯に関する情報をその他の関係国に提供する。
(b)刑事手続きの移送あるいは受け入れにひつような立法の制定を検討する。
(c)刑事手続きの移送あるいは受け入れに関して類似の法律制度を有する他国、特に自自国民の犯罪引渡しを行わない国との間で、協定を結ぶことが有用であるか否かを検討するとともに、その際の交渉の基盤として、「刑事に関する手続き移送モデル条約」を参照する。

IV:その他の協力形態と訓練

4.各国に以下を勧告する。
(a)法廷証拠、または金融取引の捜査等の分野で援助を行う事が出来るか、薬物密売および関連犯罪に関する知識、経験および技術を交換できる専門家の交流を特に考慮して、法執行職員交流プログラムの開発あるいは拡大を検討する。
(b)適当な場合、法執行機関間の協力を強化する方法を検討する。複数国で活動する薬物取引組織と闘うため、情報の共有と合同捜査戦略の開発を改善する。
ある国における捜査活動が他国における捜査を補完するようにする。関係国の司法管轄権を損なわずに、特定プロジェクトについて協力する用意を整える。
(c)特に、押収された麻薬、向精神薬および前駆物質の科学的特性と包装材料の検査に基づいた法廷分析を通じて開発された情報を交換する。
(d)国内の法律制度に矛盾しない高速の情報交換を促進するため、近代通信能力を活用する安全な手段の開発を検討する。
(e)薬物取引事件の捜査、税関や沿岸警備隊、警察等あらゆる関係機関の間の密接な協力推進および訓練提供の確保のために、法執行機関内あるいはそれに結びついた特別ユニットの設置を検討する。
(f)薬物乱用および関連する健康問題を緩和するため、刑事司法、保健および社会システム間の協力を補強する措置を検討する。 (g)執行機関間だけでなく、司法当局間の協力も強化する。
(h)協定あるいは取り決めを通じて、隣国と適宜協力し、自国の内水が不正取引にもちいられないようにする。

V:コントロールド・デリバリー

5.各国に以下を勧告する。
(a)自国の国内法制度の基本原則が許す場合、国家間で相互に合意された協定、取り決めおよび了解に従いながら、立法、手続きおよび慣行により、国内レベルの双方で、取引追跡捜査の手法を用いることができるようにする。
(b )取引追跡捜査の利用を促進するため、隣国をはじめとるす他国との協定あるいは取り決めの締結を検討する。あるいはケース・バイ・ケースでかかる可能性を検討する。
(c )経験と機材の交換を通じ、相互の援助を行う。また、不正薬物の積み荷を追跡する技術的機材を開発したか、不正薬物を代替できる無害物質を開発した場合、取引追跡捜査の成功を確保するため、かかる機材あるいは物質を他国に供給することを検討する。

VI:海路による不正取引

6.各国に以下を勧告する。
(a)権限ある国内当局の判別、船籍簿の保管、十分な法律執行権限の確立等、1988年条約の法的要件の充足を確保するよう、国内立法の見直しを行う。
(b)迅速な対応と決定する確保するという目標を持って調整と協力を促進するため、権限ある当局間の通信経路および手続きの見直しを行う。
(c)国内薬物法執行機関の長による会合を含め、二国間および地域会合によって海上における薬物法執行に関する地域協力を促進する。
(d)1988年条約第17条に従い、海路による薬物不正取引対策に関する協力を強化する二国間および多国間協定を交渉・実施する。
(e)疑いのある船舶の判別と監視、乗船手続、捜査手法および薬物判別を含め、海上に於ける薬物法執行を担当する法律執行職員の訓練を行う。
(f)多国間訓練セミナーを通じて他国と協力する。
(g)その法律制度と矛盾しない範囲において、国連薬物統制計画の海上に於ける薬物法執行訓練の手引きを用いて、共通の海上法執行手続きを促進する。

VII:補完的措置

7.以下の分野において、1988年条約の実施をさらに強化する補完的措置の策定を検討し、個人の人権尊重を正義と安全の基本原則に調和させることを各国に勧告する。
(a)薬物不正取引が絡む事件において状況から正当化される場合における、裁判官、検察官、証人およびその他の監視・法律執行機関メンバーの保護
(b)新しい捜査手法
(c)国際協力を増大させるための手続きの調和および簡素化
(d)特に薬物関連犯罪に関する、法律機関とその司法協力能力の開発あるいは強化
(e)技術協力、訓練および人材育成の強化による、刑事司法担当職員の専門化