-薬物乱用防止五カ年戦略の用語の解説等-
□『暴力団の資金源』
平成9年の暴力団構成員及び準構成員の検挙数を罪種別で見ると、覚せい剤取締法違反が7,804人(構成比24.3%)と最も多く、薬物犯罪が暴力団の大きな収入源となっていることをうかがわせる。
□『系列の異なる暴力団同士が薬物の取引を行った事例』
平成8年6月、福島、静岡において、暴力団員を含む3名に対して覚せい剤を卸売りしていた他の系列の暴力団幹部(40歳)を麻薬特例法第8条(業として行う不法輸入等)違反で検挙した。
□『物流サービスを利用して、複数県にまたがる取引の事例』
平成7年5月〜9月、東京に本拠を置く広域暴力団の傘下組織が、組織ぐるみで宅配便で覚せい剤を全国に密売していた事例について、関係者7名を検挙、覚せい剤約1.9kg、大麻約1kgを押収し、密売ルートを壊滅させた。また、平成8年4月〜7月、宅配便により覚せい剤約100gを埼玉県から大阪まで送付し、また新幹線の小荷物送便「レールゴーサービス」により覚せい剤約100gを隠匿した荷物を東京駅から新大阪駅まで送付するなどして譲渡していた千葉県在住の暴力団幹部(37歳)を麻薬特例法第8条違反で検挙した。
□『海外の犯罪組織との連携の事例』
平成6年6月、福岡で東シナ海の台湾沖洋上において台湾船から覚せい剤152.5kgを受け取った暴力団幹部(41歳)等を覚せい剤取締法違反で検挙した。
□『イラン人の覚せい剤事犯の事例』
平成9年10月、埼玉県で末端乱用者からの突き上げ調査により、携帯電話を使用して薬物を密売していたイラン人を逮捕し取り調べた結果、大規模な密売組織の存在が判明し、密売アジトを捜査して覚せい剤約260gを発見押収するとともにイラン人密売人(33歳)を覚せい剤取締法で現行犯逮捕した。
□『不良来日外国人密売人に関する調査結果』
愛知県警が平成8年中に検挙した少年の覚せい剤事犯76人に対して購入元等についての調査を行ったところ、半数以上の43人(56.6%)が「イラン人から入手した」と答え、「友人、知人から入手した」の30人(39.5%)を大きく上回った。
□『少年の薬物事犯の事例』
平成9年2月、埼玉でダイエットに効果があると聞き、イラン人から覚せい剤を購入して友人達と吸入していた女子高校生5人(いずれも18歳)。女子中学生1人(14歳)を覚せい剤取締法違反で検挙した。
□『暴力団・・・との関係を深めている事例』
平成9年4月〜6月、イラン人の覚せい剤密売事件を検挙し、裏付け捜査から同イラン人に覚せい剤を譲渡していた暴力団員(50歳)と暴力団幹部(30歳)を覚せい剤取締法違反で検挙した。
□『イラン人組織犯罪の事例』
平成9年8月、渋谷区・港区を拠点に複数薬物を密売していた都内最大のイラン人薬物密売グループを検挙し、イラン人(28歳)8人等合計10人を覚せい剤取締法違反等で検挙するとともに、覚せい剤約2.4kgなどの大量の薬物、携帯電話20台及び現金約3,400万円を押収した。
□『来日外国人による薬物事犯のうち不法滞在者によるもの』
□『薬物を郵便等で送り、代金は銀行振込で支払った事例』
平成9年10月、岩手県内の男に覚せい剤の代金を銀行振込させ、宅配便で覚せい剤を送付して譲渡していた千葉県内居住の密売人(22歳)を覚せい剤取締法違反で検挙した。
□『携帯電話を利用した密売人を検挙した事例』
平成9年1月愛知県で携帯電話で薬物の注文を受け、時間、場所を打ち合わせて取引する方法で平成7年頃から覚せい剤等を密売していたイラン人密売人2人(25歳、32歳)を覚せい剤取締法違反で検挙した。同人らの関係場所の捜査により、現金1,245万円を押収した。
□『パソコン通信等を利用した薬物密売事例』平成8年10月〜9年6月、病院看護士や大学生等によるパソコン通信等を利用した広域的な向精神薬等の密売事犯を摘発し、10都道府県に居住する10名を検挙し、病院から盗取したものである向精神薬約1万1千錠等を押収した。また、平成9年1月、パソコン通信の掲示板に「コギャルゲットに最適なドラッグをお売りいたします」等と掲載し、電子メールの送受信により注文を受け、覚せい剤約6gを密売していた無職男性(30歳)を覚せい剤取締法違反で検挙した。
□『インターネットによる事例』
平成9年5月、秋田でインターネットを通じてカナダ及びオランダの大麻種子販売元から国際郵便で種子を購入し、自宅で栽培していた会社員(31歳)を大麻取締法違反で検挙した。
□『向精神薬』
中枢神経に作用して精神の機能に影響を及ぼし乱用のおそれのある77種類の物質で、睡眠薬や精神安定剤など医療上の用途も広い。有害性も多様であり、製造・流通について免許を受けた者に限るなどの規制が行われており、違反行為は処罰される。
□『大麻』
大麻草(別名アサ)及びその製品である乾燥大麻(マリファナ)、大麻樹脂(ハッシシ)等。幻覚等の作用を起こす物質THC(テトラヒドロカンナビノール)を含む。大麻取締法によって所持・栽培・譲渡等一連の行為が処罰される。
□『コカイン』
南米原産の植物のコカの葉から精製され、覚せい剤同様の興奮作用があり毒性が強い。米国でクラックと呼ばれる吸煙用コカインが猛威を振るう。麻薬として麻薬及び向精神薬取締法によって、輸入・譲渡・所持・使用等一連の行為が処罰される。
□『MDMA』
アンフェタミン型覚せい剤(ATS)のうち、主にヨーロッパを中心に乱用されている薬物で「エクスタシー」とも呼ばれる。日本では麻薬として麻薬及び向精神薬取締法により、輸入・譲渡・所持・使用等一連の行為が処罰される。
□『他種類の薬物を同時に扱う事例』
平成8年8月、東京で密売用に小分けしたコカイン115g、MDMA198錠、大麻樹脂555g、覚せい剤10gなどを室内の配水管などに隠して所持している元米国海兵隊員を検挙した。また、平成5年2月〜6年3月、大阪でタイから密輸したヘロイン約1kgを所持していたナイジェリア人等5名、続いてナイジェリアから密輸した大麻約10kgを鞄に入れて所持していた日本人レゲエ・バー経営者を検挙した。その仲間でナイジェリア人組織に依頼された日本人女性が、米国にヘロイン3kgを密輸する途中オーストリアで警察に逮捕された。
□『多剤乱用の事例』
平成7年8月、大阪で覚せい剤、大麻の所持により逮捕された男性(29歳)は、採尿検査及び取調の結果、ヘロイン中毒の様子がうかがえ、活動する時は覚せい剤で倦怠感を取り除き、外出時は持続効果のあるMDMAを用い、時々は向精神薬を使用していたことが判明した。また、平成9年4月、イラン人から入手したコカイン1.2g、LSD4片、覚せい剤0.2g、あへん0.23g、大麻樹脂0.4g、MDMA・N-エチルMDA含有の錠剤3錠を所持している大阪の会社員(33歳)を検挙した。
□『ドラッグ本』
依存性のある乱用薬物の製造、入手、使用法等を解説し、非合法又はすれすれの行為をそそのかす悪質な本や雑誌。一般人に対する規制薬物の広告は麻薬及び向精神薬取締法等の薬物関連法規で禁止されているが、青少年らに広く読まれるなど悪影響が懸念される。
□『向精神薬の盗難の事例』
向精神薬を施用する病院・診療所からの盗難件数が年間30件から50件にも達し、増加傾向にある。これに対して国・都道府県は厳重な保管・管理の徹底を指導している。
□『モルヒネ等医療用麻薬のがん疼痛緩和への使用』
1986年にWHOで鎮痛剤としての有用性が再確認され、国際的に末期がん患者に対する疼痛緩和の目的でのモルヒネ使用は一般化している。我が国の人口当たりの消費量は欧米諸国の約十分の一であるが、年々増加しており、厚生労働省としても、マニュアル作成、講習会などを通じ適正な使用の普及を図っている。
□『麻薬特例法』
昭和63年に締結された麻薬及び向精神薬取締法の不正取引の防止に関する国際連合条約(略称:麻薬新条約)の国内法担保措置として、平成3年に制定された法律で正式名称は「国際的な協力の下に規制薬物に係わる不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例に関する法律」。
□『麻薬特例法8条等に該当する事犯』
麻薬特例法8条(業として行う不正輸入等)の罪に該当する事犯としては、平成8年6月から同年10月までの約5カ月間にわたり、通称「アメリカ村」において覚せい剤、大麻等を密売していたイラン人2人(31歳、30歳)を逮捕し、両名とも8条違反で起訴された例がある。
同法9条(不正収益等隠匿)の罪に該当する事犯としては、平成9年4月から同年6月までの間に、5回にわたり、薬物密売の不法収益計約5,300万円をアラブ首長国連邦所在の銀行の他人名義の口座に共犯者を介して送金していたイラン人密売人(31歳)を平成10年1月、9条違反で検挙した例がある。
同法10条(不正収益等の収受)の罪に該当する事犯としては、平成7年6月1日から同8年10月22日までの約510日間にわたり、覚せい剤密売で得た不法収益であることを知りながら、場所代目的で1日当たり29万円、合計約1億5千万円を他の系列の暴力団から徴収していた暴力団組長(56歳)等5名を、平成9年9月、10条違反で検挙した例がある。
□『コントロールド・デリバリー』
麻薬新条約上、締結国に実施を義務づけられた捜査手法で、「監視付き移転」と訳される。取締当局が薬物の不正取引を知りながら直ちに検挙せず、監視の下に運搬を許容、追跡して、黒幕まで一網打尽にするための捜査手法。密輸出入について上陸又は通関を認める手続きの特例を本法により定めた。コントロールド・デリバリーの実施件数の推移(警察庁調べ)は図表の通り。
□『電気通信の傍受制度』
犯罪捜査のための通信の当事者のいずれの同意もえないで電話でその他の電気通信の傍受を行う制度。なお、現在国会に提出されている法案は、殺人、薬物・銃器犯罪等、一定の犯罪の捜査に関し、裁判官の発する令状により、犯罪の実行に関連して行われる電話その他の電気通信を傍受する手続きを定めようとするものである。
□『不法収益のはく奪』
薬物の密売等の犯罪行為によって得た不正な経済的利益を没収し、追徴すること。警察が平成9年に検挙した同法違反事件に関する没収・追徴判決の総額は、同法10条違反で有罪となった暴力団組長に対して約1億5千万円の追徴判決が言い渡されたものを含め、約5億2千万円に上った(平成10年5月6日現在)。なお、麻薬特例法違反の事犯の検挙事件数の推移(警察庁調べ)は図表の通り。
□『金融情報ユニット』
(Financial Intelligence Unit)疑わしい取引に関する情報を金融機関等から集約し分析した上で捜査の端緒になり得る情報を捜査当局等や海外のFIUに提供する政府機関。犯罪組織等によるマネーロンダリング(資金洗浄)への有効な対策として、FATF(金融活動作業部会)の参加国を中心とする諸国において制度導入が進められているもの。
□『不法滞在外国人に対する退去強制手続き』
我が国に在留する外国人のうち、外交官等を除き、出入国管理及び難民認定法(入管法)の規定する退去強制事由に該当する者を強制的に我が国から退去させるための手続き。
□『プロバイダー』
インターネットへの接続業者
□『コンピュータ技術を備えた捜査体制』
コンピュータ・ネットワークを利用した薬物犯罪等の解明を行うために必要なコンピュータ技術、電気通信技術に関する専門的な知識、機能を有した専門家集団による捜査体制。
□『正規流通、不正流通』
麻薬及び向精神薬は、その依存性から乱用の危険性がある一方、疼痛の軽減等医療上の有用性が認められることから、医療及び学術研究の正当な目的で行う輸入・製造・販売等の一連の行為を厚生労働大臣又は都道府県の免許を有する者が行う場合に限り認めることとしている。免許業者等によるこうした正当行為を正規流通と予備、それ以外の例えば盗難、横流し等を不正流通と呼ぶ。
□『鑑定官』
犯罪捜査に当たって証拠となる乱用薬物を化学的手法により検出し、分析し、同定する役割をもった担当官で、厚生労働省麻薬取締部、都道府県警察科学捜査研究所等に配置されている。
|