をもった精密な確認試験など、実施可能な試験方法の導入を検討すべきである。
○大麻の喫煙者に比べて一般に受動喫煙では、尿中に現れる THC 代謝物の濃度は低く、測定時の濃度により、喫煙者と受動
喫煙の区別は可能であると考えられることから、尿検査の実務においては、大麻の喫煙と受動喫煙による THC の摂取を尿
中の THC 代謝物濃度で区別することにより対応していくべきである。また、CBD 製品に混入するおそれのある THC の尿
中への代謝物の影響も考慮すべきである。
ウ)再乱用防止及び社会復帰支援について
○現行の麻薬中毒者制度については、実務上も含め機能していないことから、同制度を廃止する方向で麻向法の関係条項を
改正すべきである。その際、麻向法では、都道府県に麻薬中毒者等の相談に応ずるための職員(麻薬中毒者相談員)を置く
ことが可能とされており、麻薬中毒者相談員を置いている都府県も存在する。薬物依存症等に対する相談体制を様々な形
で整えるのは重要であることから、法令上の位置付けについて検討しつつ、存続させていくべきである。
○また、大麻について使用罪の対象とし、薬物乱用に対する取締りを強化しつつも、一方で、大麻を含む薬物依存症者に対
する治療や社会復帰の機会を確保することは極めて重要である。そのため、薬物使用犯罪を経験した者が偏見や差別を受
けない診療体制や社会復帰の道筋を作るために関係省庁が一体となって支援すべきであり、この機会に取組みを一層強化
する必要がある。
具体的には、
・薬物依存症者への医療提供体制の強化として、認知行動療法に基づく治療回復プログラムを中心とした専門医療機
関の充実・普及、薬物依存症治療にあたる医療従事者の育成
・刑事司法関係機関等における社会復帰支援に繋げる指導・支援の推進として、矯正施設・更生保護施設等における
効果的な指導・支援の推進、保護観察対象者に対する薬物再乱用防止プログラムの提供など効果的な指導・支援の
推進
・地域社会における本人・家族等への支援体制の充実として、薬物犯罪から治療等に繋げるための相談・支援窓口の
周知と充実、相談・支援に携わる人材の育成、刑事司法関係機関と医療・保健・福祉等が連携した社会復帰支援体
制の強化
・薬物依存症者に関する正しい理解の促進
・薬物乱用の実態や再乱用防止に向けた効果的な治療回復プログラム等の指導・支援方策の効果検証などに関する研
究の推進など、薬物乱用防止五か年戦略の下での対応を強化すべきである。
(3)大麻の適切な使用の推進に向けて
①現状及び課題
○大麻草には約 120 種類のカンナビノイド成分が存在しているといわれ、その主な成分として、THC 以外に、CBD が知られ
ている。
○ CBD については、幻覚作用を有さず、抗てんかん作用や抗不安作用を有するとされており、前述のエピディオレックスの
ように医薬品の主成分としても活用されている。また、それ以外にも、欧米を中心に CBD 成分を含む様々な製品群が販売
されており、市場規模が急速に拡大しているとされている。また、大麻草から、バイオプラスチックや建材などの製品が
生産される海外の実例もあり、伝統的な繊維製品以外にも、様々な活用が進んでいる状況が見られる。
○我が国の現行制度においても、主に大麻草の規制部位以外から抽出されたとされるCBD成分を含む製品(CBD製品)が、海
外から輸入され、食品やサプリメントの形態で販売されている状況となっている。
○一方、国内で販売されている CBD製品から、THC が微量に検出され、市場から回収されている事例があり、安全な製品
の適正な流通・確保が課題となっている。
○また、上記(2)②イ)の通り、大麻に係る規制体系を、THCを中心とした成分規制を原則とする場合、現行とは異なり、花
穂や葉から抽出した CBD 等の成分が利用可能となる。ただし、大麻草のような自然物質を原料とする以上、CBD 製品に規
制対象成分である THCの残留が完全なゼロとすることは可能なのか、といった指摘がある。そのため、CBD 製品中に残
留する不純物である THC の取扱いについて検討する必要がある。
②見直しの考え方・方向性
○大麻に係る部位規制から成分規制へと原則を変更することに伴い、法令上、大麻由来製品に含まれる THC の残留限度値を
設定、明確化していくべきである。なお、その際、当該限度値への適合性に関しては、医薬品とは異なり、食品やサプリ
メント等であることを踏まえ、製造販売等を行う事業者の責任の下で担保することを基本として、必要な試験方法も統一
的に示すべきである。
○一方、残留する成分の特性上、 「野放し」となることがないよう、買い上げ調査等を含め、行政による監視指導を行うべきで
ある。なお、THC残留限度値を超える製品は「麻薬」となるため、所持、使用、譲渡等が禁止されることとなる。
○その際、CBD 製品中の THC 残留限度値については、栽培する大麻草に係る THC 含有量とは位置付けが異なることに留意
した上で、欧州における規制を参考に、保健衛生上の観点から、THC が精神作用等を発現する量よりも一層の安全性を見
込んだ上で、上記(2)②イ)における尿検査による大麻使用の立証に混乱を生じさせないことを勘案し、適切に設定すべき
である。
○また、CBDについては、酸及び熱を加えることにより、一部がTHC に変換するという知見もある。このように無免許で
麻薬を製造する行為は麻薬製造罪に該当することから、その取締りを徹底するなどの必要な対応を検討していくべきであ
る。
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