○加えて、THCA については、それ自体では THC と同様の精神作用はないものの、電子たばこ器具のような通常使用する様 態で、高温で加熱等して吸引する場合など、容易にTHC に変換し、THC として摂取されることが判明しており、このよ うな麻薬の前駆物質に対し、麻向法において指定する方法を検討し、所持・使用を規制すべきである。同時に、調査・研 究を進め、同様に他の麻薬成分の前駆物質に対しても適切な対応が可能な仕組みを検討すべきである。 ○ THC、CBD 以外のカンナビノイド成分については、未知の部分も多いことから、これらの成分に対する更なる調査・研究 を深めていくべきである。 (4)大麻草に係る適切な栽培及び管理の徹底について ①現状及び課題 ア)大麻栽培者数等の現状 ○大麻栽培者については、昭和29 (1954)年の37,313名、栽培面積については、昭和27 (1952)年の4,916haをピークに減少を 続け、令和 3 (2021)年現在では27名、7haにまで激減している状況である。 ○また、大麻草から採取される繊維等の収穫量については、令和2 (2020)年では繊維が約2,194kg、種子は約404kg、おがら は約 11,780kg となっており、国内需要を満たすには遠く至らず、多くは中国等からの輸入に頼っている状況となっている。 イ)大麻に係る栽培管理の現状 ○現行の大麻取締法においては、大麻栽培に当たっては大麻栽培者に限定しており、都道府県知事が免許を付与することと されている。大麻栽培者は「繊維若しくは種子を採取する目的」で栽培する者となっており、栽培目的が限定的になっている。 ○栽培管理に関しては、法令上、栽培者に係る欠格事由を定めているほかは、特段の規定はなく、大麻草の THC 含有量に関 する特段の基準はなく、また、含有量に応じた栽培管理の対応を求めていない。 ウ)国内において栽培されている大麻草の現状 ○国内において栽培されている大麻草の THC 含有量については、厚生労働省の調査では、総 THC 平均値で花穂 1.071%、葉 0.645%(総THC最大平均値では1.553%、1.036%、最小平均値では0.611%、0.293%)となっている。一方で、 「とちぎしろ」に 代表される、THC 含有量が極めて少量の品種を栽培しているケースも多く見られる。 エ)海外における大麻草栽培の現状 【アメリカ】 ○アメリカにおいては、平成 30 (2018)年に改正された農業法において「乾燥重量でTHC濃度0.3%以下の大麻草、種子、 抽出物等」をHempと定義(0.3%超をMarijuanaとして定義)し、Hempに関しては、国内での生産を合法化している。 栽培者にはライセンスを必要とするほか、嗜好用途・医療用途の Marijuana の栽培は不可としている。 ○栽培品種は公認の種子認証機関による品種認証を受け、公的基準に従って生産された品種の Hemp 種子を使用するこ とを推奨(義務付けではない)している。また、生産物の収穫前にTHC含有量に関する検査を義務付け(農場検査方式) ており、制限値を超える濃度が検出された場合は原則、処分を求めるほか、過失を繰り返すと免許剥奪の対象となる。 【欧州】 ○EUにおいては、農業生産に対する助成対象の基準を定めており、その中でTHC濃度0.2%以下と設定している。また、 Hemp 栽培で許容される THC 濃度等については各国において設定しており、ドイツ、フランスでは 0.2%、オースト リア、チェコでは 0.3% に設定している。 ○イギリスにおいては、THC 含有量が少ない産業用 Hemp の栽培を認めており、濃度基準は 0.2% を超えないことと設 定している。栽培者はライセンスを必要とするほか、栽培用途に関しては、非管理部位(種子、繊維/成熟した茎)を 用いた産業用の大麻繊維の生産、又は油を搾るための種子入手の目的に限定されており、CBD オイルの生産も含まれ ている。 ○加えて、医薬品用途で使用される大麻草の栽培も認めており、ライセンスの申請に当たっては、栽培場所、事業内容・ 目的、供給者や供給される製品の詳細、事業所のセキュリティの詳細(監視カメラ、フェンス、セキュリティ違反へ の対応等)、記録保存等の届出を求めている。書類審査・現地視察のほか、定期的な監査を行うこととしている。 【カナダ】 ○カナダの種子管理については、登録された品種の栽培に関しては、アメリカのような収穫前のサンプル検査を必要と しない取扱いとなっている。 ②見直しの考え方・方向性 ア)栽培の目的・用途について ○免許制度による適正な管理の下で、現行法の繊維若しくは種子を採取する目的に加え、CBD 製品に係る原材料の生産を含 めた新たな産業利用を念頭においた用途・目的について、栽培の現状やニーズを踏まえつつ、これらの目的を追加してい くべきである。 ○また、現行法では認めていない医薬品原料の用途に向けた栽培について、今後、新たに大麻由来の医薬品の研究開発が行 われる可能性を念頭に、これを目的とする栽培についても追加していくべきである。 21