イ)THC 含有量に応じた栽培管理のあり方について
○現行用途及び新たな産業用途(医薬品原料用途を除く)の大麻草については、THC含有量が多い必要性はないと考えられる
点に鑑みると、海外の事例も踏まえつつ、THC 含有量に関する基準を設定すべきである。
○具体的な基準については、国内で多く栽培されている品種の現状、0.2%のような海外の事例等を踏まえつつ、大麻草の花穂・
葉等の THC 含有量の上限値を設定することを検討すべきである。
○その際、栽培されている現行の大麻草のうち、THC 含有量が多い品種に係る取扱いについて、現状、極めて少数となって
いる大麻栽培者数等の現状を踏まえつつ、必要な経過措置を設け、その間に必要な品種の切り替え等を促すことを含め、
検討すべきである。
ウ)栽培管理に関する基準の明確化について
○現行の大麻取締法では、栽培管理については、欠格事由以外、免許付与に係る基準を特段設けておらず、事務を担う都道
府県にとっても判断材料に乏しい状況となっていることから、上記イ)のTHC含有量に関する基準の検討とともに、現状
等を踏まえつつ、免許・栽培管理の基準を明確化し、一定程度全国統一的なものにしていくべきである。
○上記イ)における、THC含有量に関する上限に照らし、繊維及び種子の採取、新たな産業用途(CBD製品に係る原材料の生
産を含む)を目的とする場合、THC含有量が少ない大麻草栽培であることや、現行の繊維及び種子の採取に係る栽培免許
が都道府県の自治事務であることを踏まえ、引き続き、免許事務の主体について検討を進めるべきである。
○その際、用途に応じた対応について、特に、医薬品原料用途については、実際に原料を使用するのが麻薬製造業者(厚生労
働大臣が免許権者)であること等を踏まえつつ、国(厚生労働大臣。具体的な実務は地方厚生(支)局麻薬取締部が担当。)に
よる管理を基本として検討していくべきである。
○また、大麻研究を行う研究者免許については、麻薬研究者に一元化するとともに、品種改良などの研究栽培を行う研究者
に対する栽培許可については、THCの濃度にかかわらず、一元的な許可制度(厚生労働大臣許可を想定)として検討すべき
である。また、産業用栽培、医薬品原料用栽培、研究栽培も含めて、厚生労働大臣免許や許可であっても、管内の栽培状
況を当該都道府県が把握できる仕組みを構築すべきである。
エ)THC 含有量が少ない品種に関する栽培管理のあり方及びその担保を行う仕組みについて
【栽培管理のあり方について】
○上記ウ)の検討と相まって、栽培管理のあり方について明確にしていく際、THC含有量が少ない品種の栽培に関し
ては、乱用防止を前提にしつつ、現行よりも栽培しやすい合理的な栽培管理規制や免許制度とすべきである。
○具体的には、現行の大麻取締法では、毎年、栽培者免許の申請を求められているが、上記の場合、一定の免許期間
の延長(海外の例を踏まえつつ、3年程度)を行うことを検討すべきである。
○栽培管理に関する基準については、国内の一部の都道府県が免許基準としているような高いフェンスで栽培地を囲
むことや、監視カメラを設置するなどのセキュリティ要件について、欧米では、THC 含有量が少ない品種の大麻草
栽培において、栽培地を届け出るような対応の他、特段の厳しい防犯上の栽培管理を行っていない状況である。欧
米の例を参考に、THC 含有量が少ない品種については、乱用に供されるリスクも低いため、栽培管理規制を全国的
に統一的なものとしつつ、より栽培しやすい環境を整備すべきである。一方、THC含有量が少ない品種であっても、
花穂や葉などが外部に流出しないよう、処分に係る管理を徹底すべきである。
○一方、医薬品原料用途を含め、THC 含有量が多い品種の栽培に関しては、厳格な管理を求めるべきである。
【THC 含有量の担保について】
○上記のように、THC含有量に応じた栽培管理を行う場合、特にTHC 含有量が低い品種に関して、その継続的な担
保が必要となり、具体的な担保に当たっては、国内外の事例を踏まえると、種子に関する THC 濃度の管理や、収穫
前の検査により管理する方式が考えられる。
○栽培、収穫時に THC 含有量が基準超過となり、出荷できなくなるリスクを踏まえると、種子に関する THC 濃度検
査による管理を基本とし、収穫前の生産物に対する収去検査等を必要に応じて実施できるような管理体制とすべき
である。都道府県の公的検査機関を含め、THC 濃度検査を栽培者が依頼できる登録検査機関等の実施体制を構築す
べきである。
○その上で、THC 含有量が少ない性質をもった品種や在来種について、産業用途の栽培に利用できるよう、その性質
が担保できる種子の管理体制を確保すべきである。その際、大麻草の THC などの性質を一定に保つ永続性のある採
種体制の整備が望まれる。
○国内での種子の生産・供給体制を整備するには、一定の栽培者数を前提に、供給を安定的に行うことが可能な種苗
会社、農業試験場等、種苗管理等の採種体制の主体が必要となる。なお、生産者が、THC含有量が少ない性質をもっ
た品種の種子を正しく選択するための手段として種苗法(平成10年法律第83号)に基づく品種登録が有用である。
○一方、国内では、採種体制の主体が十分ではなく、また、品種登録も進んでいない状況を踏まえ、当面、海外登録
品種の活用や、自然交配のリスクにも留意しつつ、種子に関するTHC 濃度検査の実施を前提に、THC 含有量が少
ない在来種を現行の栽培者が栽培できるようにする必要がある。
○今後、上記のように、海外において品種登録された THC 含有量の少ない品種の種子を輸入する形態も想定されるこ
とから、これらの利用可能性を検討するとともに、発芽可能な海外産の品種登録された種子の適切な輸入管理手続
きについて検討すべきである。
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